CUSTOMER VOICE
クラスメソッド株式会社 Vice President, AWS Business Unit General Manager
佐々木 大輔 様
今回、AWS事業本部で360度評価を実施しました。個人に対する評価の目が増えることで、評価が個人に依存せずに平均化されること、多角的に良いところを発見出来ること、フィードバックが多方から生まれること、この3つが360度評価を選定した理由です。
どのような施策にも言えることですが、なんとなくやりたいだけでは上手くいきません。そこには課題があり、その課題の解決策が施策であるはずです。その課題をきちんと整理し施策に関わる全ての人に共有することが、施策の成功には必要です。
AWS事業本部は現在4つの部と2つのグループがあり、人数も50人弱と大所帯です。人数が増えたことで一人の部長が全員をマネジメントすることが難しくなったため、マネジメントをする人間=マネージャーを増やし、マネジメント範囲を絞る必要性が出てきました。
マネージャーを増やすといこうことは、人事考課をする人間が増えるということです。しかし人事考課が個人の判断や感情に依存することは、組織として不平等に繋がります。例えばすごく優秀な人が、たまたまフィーリングが合わないマネージャーのチームに所属することで不当な評価をされるのは、健全とは言えません。マネージャーとメンバーの関係性に依らず、どのチームに所属していたとしても、同じように評価されるべきです。
そうすると定量的な評価が最も簡単ではあるのですが、定量的な評価のみを基準とすると、数値を到達することだけが目的となり、会社のカルチャーやチームのコミュニケーションを疎かにするメンバーが出現しがちです。定量的な評価だけでなく、定性的な評価軸も必要です。
そこで今回は、まずはトライアルとして、360度評価を実施してみることにしました。個人に対する評価の目が増えることで、評価が個人に依存せずに平均化されること、多角的に良いところを発見出来ること、フィードバックが多方から生まれること、この3つが360度評価を選定した理由です。
360度評価を実施するにあたり、まず評価軸を決めました。
今回の評価軸は以下の3点です。
・現在の職務において期待されるパフォーマンスが発揮出来ているか。
・会社のカルチャーにフィットしているか。
・職務遂行において今後の伸びしろがあるか。
次に評価項目を作成しました。クラスメソッドはエンジニアリングの会社ではあるものの、技術力はブログのアウトプットを見れば評価は可能なので、特にカルチャーフィットに注力しました。クラスメソッドのカルチャーは「リーダーシップ/オーナーシップ」が一番大きいため、これだけで17項目ありました。その他カルチャーで5項目、エンジニアリングで5項目、合計27項目を評価項目に設定。この評価項目は部長が叩き台を作り、各マネージャーがレビューをして、最終決定しました。
実施にあたり、誤った評価や運用がされないように、ルールを制定し、メンバーに周知しました。
・マネジメントメンバーが人事考課を行う際の参考情報として扱い、直接的な人事考課には使わない。
・評価者は認知バイアスを意識して評価する。
・評価は匿名で行い、決して開示しない。
・結果は本人に開示する。
・マネジメントメンバーは、高い結果について積極的に評価し、低い結果について徹底的に分析しフォローする。
重要なのは、360度の結果はあくまで参考情報であり、直接人事考課に反映しないという点です。直接人事考課に反映されるとなると、評価する側もされる側も身構えてしまい、他のメンバーに対してマイナスなフィードバックがしづらくなったり、マイナスなフィードバックを素直に受け入れることが出来なくなってしまったりします。あくまで周囲のメンバーからのフィードバックであり、改善に繋げるものであることを強調し伝えました。また、各マネージャーについては徹底的なフォローアップを求めました。
今回は株式会社Fusicが提供している360(さんろくまる)を利用しました。
人数的に、全員が全員を評価するのは難しいため、ランダムに抽出して、1人あたり8人から10人のメンバーを評価するように設定しました。実際の実施は開始から1週間以内に全メンバーが完了しました。
結果は各マネージャーが1on1で各メンバーに伝えました。ルールの通り評価者は匿名とし、ポジティブとネガティブと両方のフィードバックを伝え、ネガティブな結果については改善のためのアクションをディスカッションしました。
実施後、マネージャーによって振り返りを実施しました。一部を抜粋します。
<Keep>
・マネージャーが課題があると感じていた人の項目については同様の評価がメンバーから上がってきていた。
・全員同じ項目で評価できたのはよかった。
・みんなの意見ということで比較的好意的に受け取ってもらえた。
・低評価の項目も、本人の何かしら気づきになったようで振り返りに使えてもらっている。
・カルチャーを理解してもらう意味で、この評価項目を見てもらうだけでも良いと思った。
<Problem>
・メンバーに対する評価者が少なく、偏りがあった可能性がある。
・各評価項目の意味についてうまく伝えられなかった。
・評価基準を事前に決めておらず、五段階評価の付け方の基準が不明確だった。
<Try>
・評価項目について事前に説明会を行う。
・評価項目を整理して、代わりに被評価者を増やす。
・評価基準を決めて周知する。
今回はトライアルでしたが、結果として各マネージャーから「やってみて良かった」という意見が多かったため、今後も半年ごとの周期で実施することにしました。やり方については引き続き改善をしていきますが、組織としての評価軸を持てるのは360度評価の良さだと思います。
https://dev.classmethod.jp/etc/aws-bu-360do/