―「リーダーシップ測定」「リーダーシップ診断」は世の中にいくつもあるかと思いますが、この測定セットの特徴は何ですか?
石川先生:
3つあります。
1つ目は、リーダーシップ論の研究者が開発しているということです。
研究者が開発することで、これまで行われてきた学術研究に基づき、ある一側面に偏るのではなく網羅性や体系性のあるものになっていると思います。さらに、実証研究を行った上で、この質問項目を確定していますから、ある程度の有効性が担保されていると言えます。
2つ目は、簡便性です。
世界的に有名なストレングスファインダーのように、ある程度網羅的なアセスメントをしようとすると、かなり時間がかかるものが多いです。それに比べて、本セットは、24項目でできるので比較的手軽にできますね。
3つ目は、360度評価と組み合わせることで、自己認識と他者認識の差を得られるということです。
Aさん自身が「こう思っている」と自己評価して、それだけで判定されるのではなく、周りの人からこう見えているというのがわかるのは大きいです。
―なるほど。360度評価でリーダーシップスキルを測定するところに意味があるということですね。
石川先生:
はい、そういうことです。
先ほどのインタビューでもお話ししたように、リーダーシップは「ほかの人への影響力」なんです。つまり、自分がやっているつもりでも、ほかの人から見てそうではなければ、それは影響力になっていないんですね。
―この測定セットを特にどういう組織に利用してほしいですか?
石川先生:
一言で言うと、リーダーシップ育成を本気で考えている企業です。もう少し前提に戻って、まずどんな組織にシェアド・リーダーシップが必要とされるかをお話しすると、あいまいで不確実性の高い経営環境に置かれている組織には、シェアド・リーダーシップが必要とされると考えています。
―なぜ「あいまいで不確実性の高い経営環境に置かれている組織」には、シェアド・リーダーシップが必要になるのですか?
はい、あいまいで不確実性の高い環境とは、過去の成功体験が通用しない環境、社長も課長も含めて誰も正解がわからない環境ですよね。そういう場で何をしなければいけないかと言うと、ものすごいスピードでの学習なんです。ただし、1人でできる学習には限界があります。ですので、集団で学習していくしかないんです。
みんながリーダーシップを発揮して、知恵を出し合って、学習していくしかない。そう気づいている組織は、放っておいても個々人のリーダーシップは育たないから、本腰を入れて育成しないといけないんだと真剣に考えているはずです。
―「真剣に」と言うと、リーダーシップスキルの育成は長期的にかかるものだと考えたほうがいいでしょうか?
石川先生:
そうですね。たとえば、この測定セットを使った半年後にもう1回測定しても、恐らく変化はそこまで大きくないと思います。測定して、ギャップが見えたら、ようやく基礎を育成する出発点。どこを補えば自分の強みを発揮する準備が整うか考えながら、次のステップである「自分の強み」は何かという持論を立ててほしいんです。この測定セットは、そういった持論や目標を立てるためのツールです。それで、持論や改善のプランを試して、改善して、チェックして…というPDCAを回す中で、1年2年ぐらいで、変わってくるものかなと考えています。
それぐらい長い時間はかかるかもしれませんが、そうした個々人の変化が、会社の成果に繋がると真剣に信じている会社にぜひ使ってほしいですね。
ー最後に、日本や世界の組織論に対して、この測定セットがどういったインパクトをもたらすか、石川先生の考えを教えてください。
石川先生:
大きく2つあります。まず1つは、リーダーシップとは何かを理解して、正しく育成する、つまりは、リーダーシップは役職によるものではなくて誰もがもつものだと理解して、若いうちから育成するという説を確立するのに大きなインパクトがあるということです。「リーダーシップはリーダーが発揮すればいいよね」とか、「リーダーシップがないから課長になりたくない…」という、リーダーシップに対する一般的なイメージを変えることに繋がると思います。
2つ目は、データや客観的事実に基づいた人材開発の促進に繋がるということです。経験や勘に基づいた人材育成も否定はしませんが、先ほど話したような過去の成功体験が通じない、何が正解か分からないような時代では経験と勘だけでは全く足りなくて、客観的事実やデータに基づくっていうのが結構重要になると思うんですね。今回のアセスメントは、そういったデータに基づいた人材育成を促進する一助になると考えています。
この記事では、リーダーシップスキル測定セットを監修している立教大学石川淳教授へのインタビューを元に、
リーダーシップが必要とされる組織や、本セットのもたらすインパクトについて解説しました。
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