―はじめに、石川先生の専門分野「組織行動論」について簡単に教えてください。
石川先生:
組織行動論というのは経営学の一分野で組織の中の人間の心理や行動を扱う分野です。具体的にはモチベーションとか職務態度、組織コミットメントとか、最近でいうとエンゲージメントなども含まれます。私は、その中の1つである「リーダーシップ」に焦点を当てて研究をしています。
―その「リーダーシップ論」の中でも特に、石川先生が1番の興味の対象としているところはどこになりますか?
石川先生:
一番の興味の対象は「シェアド・リーダーシップ」です。シェアド・リーダーシップというのはいわゆるリーダー的なポジションだけでなく、すべての人がリーダーシップを発揮しているチームや職場の状態を指します。シェアド・リーダーシップが起こるとどんな良いこと・悪いことが起こるのか、どうしたらシェアド・リーダーシップになるのか、といったあたりがこれまでの研究対象ですね。
―ここまで「リーダーシップ」という言葉がたくさん出てきていますが、石川先生の定義する「リーダーシップ」について教えてください。
石川先生:
はい、一言で言えば、「チームや職場の目標を達成するために必要な、ほかのメンバーへの影響力」です。これは私個人の定義というより、むしろ世界中のリーダーシップ研究者の定義の共通項を取り出したものになります。
―そうすると、「強い役職を持った人がチームをまとめて引っ張っていく…」のような世間一般のイメージと少し異なるところもあるのかなと。
石川先生:
おっしゃるとおりです。世間一般のリーダーシップのイメージは大きく2つあって、1つは特別なカリスマのような才能があって初めて発揮できるものというイメージです。もう1つは、チームとか職場にリーダーは「1人」だというそういうイメージですね。
―そうですね、そういったイメージが強いと思います。でも、そうではないと?
石川先生:
はい、先ほどお話しした「ほかのメンバーへの影響力」ですが、たとえば、弱っている人がいた時に、その人に寄り添ってあげた結果、その人がまたチームに戻ってチームのためにガンガン働いてくれれば、その寄り添いもチームのための影響力ですし…。なかなか発言できない人にきちんと耳を傾けてあげるとか、メンバーと一緒に泣いてあげるとかそういう行動も全部、チームの目標に貢献する影響力であればリーダーシップというふうに考えます。
そう考えると、リーダーとか部長とかそういう肩書に関係なく、特別な才能がなくても誰でも発揮できうるものだなと考えているんです。
―今回のリーダーシップスキル測定セットは、何を測るものなのなのでしょうか?
石川先生:
一言で言うと、「リーダーシップの基本スキルを測定するもの」です。
効果的なリーダーシップは2階建てになっていると言われています。1階部分が基礎、2階部分が自分なりの強みというもので、今回の測定セットは、そのうち1階部分を測るものです。
―1階部分の基礎と、2階部分の自分なりの強み、それぞれどのように関係しあっているのでしょうか?
石川先生:
リーダーシップというのは、自分の強みをまわりへの影響力に変えることで最も効果的になると言われています。たとえば、よく言えば粘り強く、悪く言えば頑固者のような人が、いるとします。そして、あるプロジェクトが難航しみんなが諦めようかとなっているときに、その人が1人黙々と頑張っている、と。それを見て周りが、「あれだけ粘り強く頑張っているメンバーがいるんだから我々ももうちょっと頑張ってみようか」となったら、それは立派な影響力、リーダーシップですよね。
そのように、人それぞれ、自分の強みをリーダーシップに変えることが大事なんです。
しかしそうは言っても、基礎がない状態で、個人の強みだけ発揮するというのは、どんな分野でも難しいと言われています。今回の測定セットは、その基礎部分を測るものなので、言ってしまえば、今回全部満点だからと言って必ずしも良いリーダーシップを発揮できるとは限りません。しかし、あるカテゴリが致命的に欠けていると、自分個人の強みをリーダーシップに変化させるのはなかなか難しいと言えますね。
この記事では、リーダーシップスキル測定セットを監修している立教大学石川淳教授へのインタビューを元に、
リーダーシップの定義について解説しました。
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次の記事では、リーダーシップを360度評価で測る意味や、リーダーシップ育成を通して日本や世界の組織論がどのように変化していくか…
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