ハラスメントとは、相手を不快にさせたり怖がらせたりする行為です。加害者の意識にかかわらず、行為を受けた側が嫌がらせであると感じた場合、ハラスメントとして成立します。ハラスメントにはさまざまな種類があります。以下にて、職場に多いハラスメントを3つ挙げ、それぞれについて解説します。
■パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメントは、厚生労働省により次のように定義付けされています。
「優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、身体的もしくは精神的な苦痛を与える、または就業環境を害する行為」
具体的には恫喝や暴言、暴力、人格を否定する発言、疎外する行為などです。先輩や上司による行き過ぎた指導は、パワーハラスメントに当たる可能性があるため注意が必要です。
パワーハラスメントの定義について|雇用環境・均等局
■セクシャルハラスメント(セクハラ)
厚生労働省はセクシャルハラスメントについて、次のように定義付けしています。
「労働者の意に反する性的な言動に対する対応により、その労働者が労働条件につき不利益を受けたり、就業環境が害されたりすること」
性的な質問や身体に触れる行為、性的関係を迫ることなどがセクシャルハラスメントに該当します。男性から女性に対してだけでなく、同性同士でも適応されます。
(事業主向け)セクハラリーフ完成版|厚生労働省・都道府県労働局
■アルコールハラスメント(アルハラ)
飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為、人権侵害をアルコールハラスメントといいます。飲酒の無理強いやイッキ飲み、酔ってからむ行為、暴言、暴力などが該当します。宴会で酒類以外の飲み物を用意しない、飲酒できないことを侮辱する行為などもハラスメントです。
■マタニティハラスメント(マタハラ)
妊娠、出産、育児などをきっかけに、職場の女性に対して嫌がらせをする行為をマタニティハラスメントといいます。主に、産休や育休、時短勤務などを理由に解雇、雇い止め、降格などを行う行為などが例として挙げられます。
ここでは、ハラスメントが被害者・企業・加害者にもたらす影響について解説します。
■被害者への影響
ハラスメントの被害者は、精神的にも肉体的にも追い詰められます。自己肯定感が低下し、本来の能力を発揮できなくなる人も少なくありません。職場にいづらいストレスから精神疾患などの病気を患う場合もあります。問題が解決した後も後遺症が残り続ける可能性があり、最悪の場合は自殺に追い込まれる人もいるため、ケアが重要です。
■企業への影響
ハラスメントにより職場の雰囲気や秩序の乱れ、勤労意欲損失による生産性の低下、離職者の増加による人件費コストの増加などの影響が生じます。加えて、訴訟問題による企業イメージの低下や損害賠償による金銭的な損失が生じる可能性もあるでしょう。
■加害者への影響
ハラスメントの加害者は、職場での信用を失います。解雇や減給、懲戒、配置転換などの処分を受けるほか、場合によっては損害賠償を請求されたり、暴行罪で訴えられたりすることも考えられるでしょう。加害者の家族にも不利益が及ぶことがあります。
パワハラ防止法では、事業主にパワハラを防止するための措置を義務付けています。正式名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律です。略称を「労働施策総合推進法」といいます。
2019年5月の改正により、パワハラ防止の雇用管理上の措置が義務化されたため、パワハラ防止法と呼ばれるようになりました。2020年6月から大企業を対象に施行し、2022年4月からは中小企業にも適用されています。
次のような行為がパワーハラスメントに該当します。
・身体的な攻撃:殴打や足蹴りなど
・精神的な攻撃:人格を否定するような発言など
・人間関係からの切り離し:自身の意に沿わない社員に対する仕事外し、長期間の隔離、自宅研修の強制など
・過大な要求:勤務に直接関係のない命令(肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での作業など)
・過小な要求:容易で不適合な業務へ従事させる命令
・個の侵害:思想・信条を理由に、集団で同僚1人に対し継続的に嫌がらせをする行為
パワーハラスメントの定義について|雇用環境・均等局
ここでは、パワハラ防止法で定められている事業主が雇用管理上講ずべき措置を解説します。
■事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
経営者がパワハラに当たる行為を職場で働く全員に周知し、パワハラを禁じることを宣言する必要があります。パワハラを働いた場合、従業員に対して厳正に対処し、対処した内容を就業規則などに盛り込みます。社内研修などの場で、職場で守るべきルールを全社員に周知徹底することが重要です。
■相談や苦情に応じ、適切に対応するための体制の整備
パワハラ被害者用の相談窓口を設置します。従業員が相談できる体制の整備が義務化されたためです。相談窓口で受けた事実を全社員に周知する体制が必要です。相談窓口の担当者は、相談内容や状況に応じて柔軟かつ適切に対応できるよう備えます。
■ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
パワハラに関する事実関係を速やかに確認します。事実確認後、被害者に対し、行為者の謝罪や関係改善、配置転換など、配慮のための措置を適正に行います。そのうえで、再発防止対策を講じ、加害者への厳正な措置をとります。事実確認が取れなかった場合でも、同様の措置をとり再発防止に努めることが重要です。
■併せて講ずべき措置
被害者と加害者との両方のプライバシーを保護するために必要な措置を講じます。相談したことで被害者や加害者が不利益な扱いをされないことが重要です。具体的には、不当な解雇などを禁止するルールなどを定め、全従業員に周知徹底します。
360度評価とは、複数の人が対象者の評価をする制度です。フィードバックするのは、上司や同僚、部下のほか、社外にて取引先の顧客にフィードバックしてもらうこともあります。これまでは少数の上司が部下を評価することが通例であったため、フィードバックが偏ることがありました。
360度評価では、さまざまな人にフィードバックしてもらうことで、客観的な評価が得られます。
■360度評価の導入方法
360度評価の導入方法として、4つのステップを紹介します。
1.導入の目的を明確にする
自社の課題を明確にして360度評価を導入する目的を定めます。
2.運用ルールを定める
360度評価を、導入するに当たり運用ルールを定めます。
3.フィードバック方法を定める
360度評価のフィードバック方法を定めておきます。
4.社員全体に周知を行う
360度評価を導入する目的や背景を伝えます。
ここでは、360度評価がハラスメント対策に有効とされる理由を3つ解説します。
■ハラスメント傾向を早期に把握できる
360度評価を活用することで、ハラスメントを早期に把握できます。社員の普段の行動を多角的・客観的な視点で把握する取り組みを行っているためです。実際には、役職や立場などを問わずヒアリングをすることで現状や兆候を把握します。
企業内で発生しているハラスメント問題を放置していると大きなトラブルに発展する可能性があります。360度評価を活用すれば、社内のトラブルを可視化できるでしょう。
■ハラスメント行動をけん制・防止ができる
ハラスメント行動をけん制し、未然に防止できます。360度評価は上司だけでなく、部下も上司のフィードバックを行うため、よい意味で周りからの視点を気にして行動するようになります。これにより、自分の行為はハラスメントに当たらないのかを振り返る機会が増え、結果的にハラスメントにあたる行為のけん制や防止につながります。
■プライバシーを守りながらハラスメント対策ができる
加害者と被害者との両方のプライバシーを守りながらハラスメント対策ができます。社内に設置されたハラスメント相談窓口は、人事部門や法務部門、産業医・産業カウンセラーと連携しながら運営しましょう。多くの人から回答を集めたり、匿名でアンケートを実施したりできます。
◆ハラスメントについての周知・啓発
360度評価を実施する際には、事前に実施目的を浸透させることが不可欠です。何を目的として評価するのかを回答者に周知徹底することで、回答者が評価に向き合う姿勢は変わってきます。
⇒詳しくはコラム「失敗しない!360度評価を成功させるコツ その①~実施目的の浸透~」より
ハラスメント対策を目的として360度評価を実施する際には、ハラスメントについて社員に周知する必要があります。その際に、ハラスメントについての社員の理解を促すことができるでしょう。
◆研修と組み合わせての実施
また、別途ハラスメントについての研修・講習を行う場合、360度評価を組み合わせることで、その研修の効果測定をすることができます。研修を終えてしばらく経った後などに実施すると、社員がどれほどハラスメント防止に向き合えているのかを客観的かつ定量的に測ることができます。
⇒詳しくはコラム「研修の効果、定量的に測定できないと諦めていませんか?」より
研修は、職階別に分けて実施することでより効果を発揮しますが、この点においても360度評価を活用することができます。ハラスメント防止が特に求められるマネジメント層を対象とした360度評価は、数多くの企業様で導入いただいております。
◆匿名性の担保
360(さんろくまる)は匿名性を担保しており、誰がどんな評価をしたか、対象者だけでなく、管理者からも特定できなくなっています。勇気が出ずに自主的に告発できない場合にも、360度評価により率直なフィードバックを促すことができるでしょう。
◆第三者の視点
厚生労働省「職場のパワーハラスメント対策取り組み好事例集」によると、実際の事例として、当事者ではなく、客観的な周囲の第三者から相談窓口に情報が入り、歯止めをかけるに至ったケースがあります。当事者間のみでは、ハラスメントに該当するような被害を受けていても、「自分のせいだ」と思い込んでしまい、発覚に至らない場合もあります。このようなケースにおいても、360度評価は効果を発揮します。360度評価は、嫌がらせ行為を受けている本人だけでなく、その周囲の社員も含めた複数人が回答者として関わるためです。360度評価を使うことで、第三者による客観的な視点でのフィードバックを得て、被害者の助けとなることができます。
参考:
厚生労働省 「職場のパワーハラスメント対策 取組好事例集」(pdf)
ハラスメント対策を目的とした360度評価では、どのような評価項目を設定するのが良いのでしょうか。この場合は、対象者の人との関わり方を明らかにする評価項目を設定することが重要です。例えば「親密性」「傾聴力」など、対象者の人との接し方に関わる項目を設定するのが効果的でしょう。
これだけで判断が難しい場合、ハラスメントに直接関与する項目を設定するのも良いでしょう。厚生労働省の「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」(2020)では、パワーハラスメントが発生しやすい職場に共通する特徴を、現在の職場でパワハラを受けた人と、過去3年間に勤務先でパワハラを経験しなかった人に分けて発表しています。それぞれの対象の間に、特に大きなギャップが見られた項目として、「上司と部下のコミュニケーションが少ない」「残業が多い/休暇を取りにくい」「失敗への許容度が低い」などが挙げられています。そのため、「頻繁にコミュニケーションを行わない」「残業を強いられたことがある」「失敗への許容度が低い」といった点を確認できる項目が、エラーチェックにおいて効果を発揮するでしょう。さらに、自由記述のコメント欄を設けることで、細かい状況を把握できるはずです。
⇒設定自由度抜群!360(さんろくまる)の評価項目の設定について、詳しくはこちらをご覧ください。
参考:
厚生労働省 令和2年度 厚生労働省委託事業 「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(pdf)
ハラスメントは、相手を不快にさせたり怖がらせたりする行為です。企業で起きているハラスメント問題に気づかず放置していると、被害者だけでなく企業や加害者にも悪い影響が及ぶ可能性があります。360度評価を導入することでハラスメント傾向を早期に把握し、ハラスメント行動を防ぐことが可能です。プライバシーにも配慮する仕組みになっており、被害者や加害者の不利益にならないように配慮されています。
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